このブログの大きなテーマである「ぬい撮り」。
意味は「ぬいぐるみさんの写真を撮ること」なのですが、私は初めてこの言葉を聞いたとき、妙な違和感を覚えました。
「ぬいぐるみって言っちゃったら、大切な私のお友達がモノみたいになっちゃうじゃん…」
理解のない人には頭おかしい人と思われそうな感情ですが、このブログの読者さんなら共感してくれる人もいるかもしれませんね。
一方、SNSで「#ぬい撮り」というハッシュタグを使うと、大切なぬいぐるみのお友達と楽しく暮らしたり、写真撮影をしているお仲間さんとつながることができます。これは便利。
ということで今回は、この「ぬい撮り」という言葉の功罪を踏まえ、私がこれからこの言葉とどう向き合っていきたいか考えようと思います。
「ぬい撮り」ということば
そもそも、「ぬい撮り」とはどういう言葉なのでしょうか。
ぬい撮りとは「ぬいぐるみの写真を撮ること」という意味で、インスタグラムの活用ガイド書籍に、一つのジャンルとしても紹介されています。
2014年NHK「あさイチ」の特集をきっかけにネットで話題に
最初に誰がこの言葉を使い始めたのかまでは調べきれなかったのですが、ネットで大きく話題になったのは2014年7月のこと。
NHKで放送されている朝の情報番組「あさイチ」で"ぬい撮り特集"が放送されたことをきっかけに、NAVERまとめやJ-CASTなどの各種ウェブサイトでも「ぬい撮りの魅力やコツ」をテーマに何度か取り上げられました。
ネットユーザーと「ぬい撮り」
2014年以降、テレビやコラムメディアで「ぬい撮り」が取り上げられる大きなムーブメントは起きていませんが、現在も「ぬい撮り」を楽しむ人々の個人的な日記ブログやSNSの投稿は多く散見されます。
例えば、前述の「あさイチ」の番組内で紹介されたmixiのコミュニティ「ぬいぐるみを撮るひとびと。」は放送時で1234人の加入数を抱えており、2016年12月現在では1400人近くにのぼっています。
さらに、近年の画像投稿ツールの主力であるインスタグラムでも、「#ぬい撮り」のついた写真の投稿数は12月16日時点で11万2000件越え(「#ぬいどり」では2万3000件越え)となっています。
それぞれ大切なぬいぐるみさんと過ごす旅先やカフェでのひとときなど、日常の一部を撮影し、ネットに投稿している人が多いようです。
国語辞書には載っていない言葉なので、誰でも知っている言葉ではないものの、
日ごろぬいぐるみさんを撮影しているネットユーザーには、男女問わずそれなりに浸透している言葉であると言えるでしょう。
「ぬい撮り」という言葉のせいで、大切なお友達が"モノ"扱いになってしまう?
ここで本題に戻りましょう。
記事の冒頭で、私がはじめて「ぬい撮り」という言葉を聞いたとき、大事なお友達が「モノ」みたいに感じられて違和感を覚えたというエピソードをお話しました。
「ぬい撮り」をしているネット上の人たちは、同じような感覚を抱かないのでしょうか?
「#ぬいぐるみではありません家族です」というタグに表れる心理
興味深いのが、インスタでぬい撮りの投稿をしている人が使っている「#ぬいぐるみじゃありません家族です」というハッシュタグです。
このタグがついた写真は2016年12月16日時点で、9367件もの投稿数があります。
このタグの使い方の特徴として、主に前述の「#ぬい撮り」や「#ぬいどり」と同じ写真に並行してつけられます。
使用例はこんな感じ↓
(1番目~3番目のハッシュタグに注目)
このタグを使っている人の心情を推察すると、
ジャンル上では"ぬいぐるみ"の写真だから、#ぬい撮り はつける。
けれども、この子は私の大切な家族・お友達。
単なるモノとしてのぬいぐるみを超える存在なんだよ!
という主張が隠れているのでしょう。
インスタ上では「#ぬいぐるみじゃありません家族です」のほかにも、「#愛ぐるみ」など、
自分の写真のモデルさんを、愛でるべき・魂ある存在として認識している様子をにおわせるタグが存在しています。
こうしたハッシュタグを見ると、私と同じように、「ぬい撮り」という言葉に"モノっぽさがでる違和感"を抱えている人が少なからずいる様子がうかがえます。
なぜ「ぬい撮り」という言葉を使うのか?
では、上述のインスタユーザーさんたちは、なぜ「#ぬいぐるみじゃありません家族です」というタグをつけてまで、「ぬい撮り」という言葉を使うのでしょう?
同じ趣味の人とつながれるから
その理由はまさしく、「#ぬい撮り」というタグを使うことで、自分と同じように大切なぬいぐるみさんをモデルに撮影を楽しんでいる人と交流できるからだと思います。
例えば、私はふだん、「かえるのピクルス」シリーズの写真を投稿しています。
私と同じようにピクルスを撮っている方の投稿が見たいときは「#かえるのピクルス」のタグをたどれば見つけることができます。
しかし「#かえるのピクルス」のタグだけでは、ピクルスでない子をモデルに撮っているユーザーさんとはつながれません。
そんな時、「#ぬい撮り」で探してみると、どうでしょう。
うさぎさんやくまさん、子犬さんなどのかわいいぬいぐるみの家族を撮っているユーザーさんとめぐりあうことができるんです。
かえるのピクルス以外の動物やキャラクターを撮っているユーザーさんや、モデルさんたちのとの出会いは、
私が撮影のインスピレーションを高めたり、癒されたい願望を満たすうえで、とてもかけがえのないものになりました。
「#ぬい撮り」は同じ趣味の人々をつなぐ、重要な役割をに担っているキーワードなのです。
「ぬい撮り」という言葉を使う人ほど、「大切な家族」と認識しているトリック
さらに面白いことに、ぬいぐるみさんたちに特別な思い入れがなく、「モノ」だと思っている人の多くは「ぬい撮り」という言葉を知りません。
日常的にこの言葉を使っていないのです。
つまり、この「ぬい撮り」という言葉を使っている人こそ、ぬいぐるみさんたちを家族やパートナーとしてとらえ、愛を注いでいる層の人たちである可能性が非常に高いといえます。
「ぬい撮り」は一見モデルさんたちをモノのように見せる言葉でありながら、その言葉を発する多くの人たちは、モノはおろか家族のような大切な存在として認識している。
矛盾した特性をもった言葉なのだと、考えさせられました。
「ふろーらろぐ」ではこうしてます
上記の特性をふまえ、本ブログ「ふろーらろぐ」では「ぬい撮り」やそれに関係した言葉をどう使っていきたいか2つの視点から考えたいと思います。
1.「ぬいぐるみ」とはっきり言わなくて済む、ありがたい言葉だと捉える
まず、根本的な立場として「ぬい撮り」という言葉は封印しないでおこうと思います。
理由は簡単。上述のように、このキーワードを使えば、愛を持って「ぬい撮り」をしている人や、これからしようとしている人に出会える素敵な確率が高まるからです。
この言葉を使うと「モノっぽくなってしまう」という問題については、あえて裏を突き、
「ぬいぐるみ」とはっきり言わずに済む、ありがたい言葉だと捉えようと視点を変えてみます。
「ぬいぐるみカメラマン」というと単にモノのぬいぐるみをひたすら撮っているイメージがあるけれど、
「ぬい撮り師」という言葉ならモデルさんたちと和気あいあいと撮影会を楽しんでいる情景が頭に浮かぶじゃないですか。愛を持ってモデルさんのいい表情を引き出せるプロって感じもする。笑
「ぬいぐるみ撮影」ではなくあえて「ぬい撮り」と表現することで、大切な家族やお友達としての絆や愛あふれる感じをみんなにイメージしてもらいたい。
さらに、「ぬい撮り」という言葉が持つ温かい言葉のイメージを、このブログの記事でさらに根付かせていけたらいいなぁと思います。
2.「モデル」という動的な言葉をつけて、物体感をなくす
もうひとつ、「ふろーらろぐ」で独自に工夫しているのが「ぬいぐるみモデルさん」という言葉。
写真撮影を扱っているこのブログの性質上、被写体を指す言葉が必要です。
「ぬいぐるみの○○ちゃんには、どこどこに座ってもらって、ここからシャッターを切る」という要領で説明を書きたいので。
でもこの時も、モノっぽさが出るので、単なる「ぬいぐるみ」という言葉はやっぱり避けたいのです。
そこで、「ぬいぐるみ」という言葉に「モデルさん」という言葉を付けて「ぬいぐるみモデルさん」と呼んだり、単に「モデルさん」と呼んだりすることにしました。
「モデルさん」という言葉によって、写真にうつる彼ら・彼女らが積極的にポーズをとる動的なイメージがわいてくるのではないでしょうか。
動かない「モノ」としてのイメージは、だいぶ払拭されますよね。
ただしこの発想は、このブログでメインに登場してくれる"ふろーらちゃん"が、モデルもこなせそうなキラキラした性格だったことが前提にあるのは確かだな、とは思います。
うちにはゴロゴロしてばっかりの子もいるし、自らすすんで写真に入ってこないような「モデルさんじゃないよね」って性格の子もいるので。
ふろーらちゃんとはよく「撮影会」をしていますが、あくまで彼らの「日常の生活を切り取る」という意味でぬい撮りをする場合には、「モデル」という言葉は適さないかもしれません。
「ぬい撮りモデル」という言葉はあくまでも、写真の撮り方をブログ上で説明するためのキーワードだと捉えてもらえたらうれしいです。
あなたはどう考えますか?
ここまで、「ぬい撮り」という言葉について自分なりに議論してみました。
これからSNSで様々なお仲間さんを見つけたり、このブログで記事を書いたりするうちに、また考え方は少しずつ変わってくるかもしれません。でも、ひとまずは上述のスタンスで行こうかな、と思ってます。
あなたは「ぬい撮り」という言葉、どう思いますか?
ここでは議論の前提として、「ぬいぐるみ」と呼ぶとモノっぽくなる・魂が宿っている意味合いが減ってしまうと書いてきましたが、
実際は家族の一部として愛しながら、「ぬいぐるみ」という言葉を使っている方もいると思います。
普段なにげなく使っていた方も、嫌悪感があるから避けていたという方も、改めて「ぬい撮り」という言葉と向き合うきっかけになればうれしいです。
by ぬい撮りコラムニスト"ゆりりーぬ"
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